★徳島物語(第1章)
■仕切り直し
■ステークホルダーを集める
■ソーシャルなファーマーズマーケットづくり
■マーケットのシンボル「土窯」づくり
■テーマ「土窯で焼くパンとスープ」
「今度こそは」。そんな想いで、2015年12月12日(土)、米国オレゴン州ポートランドからスティーブ・ジョンソン博士を招いて、徳島大学ファーマーズマーケット社会実験を実践しました。冬の寒い日でしたが、実りの大きい、記念すべき第1回の開催となりました。
●学生と地域とのコラボ:
「記念すべき開催となった」。そう考えるポイントは2つあります。一つは、学生と地域とのコラボで企画/運営したことです。
徳大ファーマーズマーケットは、主催は徳島大学地域創生センターですが、理念的には、徳大のファーマーズマーケットではなく、徳大でやるファーマーズマーケットです。地域の持続にインパクトのある革新的試み、公共づくりを、大学と地域が中心になって、ステークホルダーを集め、共創で取り組む。そして、徳大キャンパスで社会実験する。すなわち、キャンパスリビングラボの試みです。
●ステークホルダー集め
その時、重要なことは、ステークホルダー集め。第一に、徳島大学生です。この第1回では、共通教育「サービスラーニング」の受講者3名(ポートランドへ短期留学を予定者)、総合科学部「キャリアプラン」の受講者21名が企画/運営に参加しました。授業の担当はいずれも吉田敦也。学年は1年生です。
第二のステークホルダーは高校生でした。運営の若年化を図り、持続性を高める効果が期待できます。そこで、アイスクリームの製造販売で有名で、フューチャーセンター事業「スクールキッチンプロジェクト」のメンバーとしてフューチャーセンター開設以前から交流のあった徳島県立小松島西高等学校のNPO雪花菜工房に、指導教諭の周藤隆明先生を通じて声かけしました。周藤隆明先生とは一緒にポートランドへ行った間柄です。
第三のステークホルダーはいわゆる地域パートナー。地域の農家や事業者さんたちに声かけしました。その際に、効果したのは、地域創生センターが持つ3つのつながり、あるいはアクティビティでした。
ひとつ目は先の周藤先生とのつながり。周藤先生は、小松島市商工会議所の「小松島6次化ネットワーク農業WG」のメンバーで、6次化にチャレンジする農家さん、パン屋さん、お菓子屋さんなどをつなぎました。
ふたつ目は、「くまごろうパン」の松浦社長とのつながり。そして、社員の三村さんのコネクターとしてのアクションです。松浦社長は、徳島大学の大学院生だったご縁から地域創生センターの地域連携教育事業等(担当:吉田敦也)に何かと協力的で、学生を巻き込んだソーシャルデザインの取り組みや朝ごはんの会を継続的に参加していました。その社長の声かけで参加した社員の三村さんは「くまごろうパン」ネットワークを通じて、地元の農家とは少し異なる、移住者らの農業や関係事業と徳大ファーマーズマーケットを結びつける役割を果たしました。これは後につながる、大きな力となり、地域プラットフォームとしての基盤を築きました。
3つ目は、フューチャーセンターA.BAの「場」を作る力です。「未来を創る」そのための「問題発見」と「最適な目的を設定」といった基本手法で運営されるフューチャーセンターの存在は、地域社会へのインパクトを持ち、良質の、そして、未来のステークホルダーが集まってくる。そんな実感があります。人数的には多くありませんが、徳大ファーマーズマーケットへ地域おこし協力隊やまちづくりの専門家らの参加が得られつつあるのはこの力によるものと考えています。
第四のステークホルダーは、大学内の教職員です。特に職員が、こうした新しい試みに対してアクションを起こしていくことが、この徳大ファーマーズマーケットの取り組みで実感できました。数としてはごく少数ですが、同じマインドを持った教職員が立場や専門領域を超えて、しかし、ゆるやかにつながることで形成されるエコシステムは最強のものに育つと感じています。
第五のステークホルダーは行政です。今回は、徳島県「大学生に対する食育推進事業」(地域創生センター受託事業)が共催しました。学生と野菜との出会いの「場」づくりの観点から、生産者、6次産業、調理人らとの交流やコラボを日常化し、新鮮野菜を美味しく食べる健康で幸せのあるキャンパスづくりに向けた実験を行いました。
以上のようになステークホルダー集めが第1回の開催には大きな作業となりました。
●村づくり
「記念すべき開催となった」。そう考える2つ目のポイントは、ファーマーズマーケットを、ただ売るだけではない、ソーシャルなものにするための「村づくり」への取り組みです。
ひとつは、出店のためのテントを活用し、マーケット会場の形状を、環状のレイアウトを実現しました。ファーマーズマーケットを上空から見ると、丸い円状になっています。
その中心には広場とシンボル(タワーとかゾーンとか)を設置しました。
→人々は火を囲み、ホッコリ暖炉を楽しむ →土窯
=寒さを楽しむ仕掛けづくりがある。→楽しいことをみんなでやる
●学生の活躍
村づくりを意識した環境のもと、学生たちは様々なオリジナル企画を考え、プロトタイピングし、大活躍しました。
その中には、
①土窯を作りパンを焼く。
実際には耐火煉瓦によるインスタントな窯。
パンは竹輪パン(使用する竹は勝浦町産とし徳島ローカルをアピール)
②スープづくり
ポートランド「フォーシーズンズ」マーケットの「鼻風邪ぶっ飛ばせチキンヌードル」スープのレシピをダウンロードし、地域の農家さんからいただいたローカル野菜で「美味しいスープ」を自作する。
③ビジネスモデル開発
通貨を使わずものを流通させることで、価格による販売競争でなく、質や社会価値による販売の促進、企業間、事業者間の情報共有を促しイノベーションに繋げるビジネスモデルアイディア、などが登場しました。
●学びをどう生かすか
これらは、米国オレゴン州ポートランドのファーマーズマーケットをモデルに考えたことですが、第0回の経験、そして、その時のマーク・レイクマンさん、マット・ビボーさんの教えから学び取ったことです。
①村の精霊
村の精霊が目を覚まし、パンとスープを食べに来る。そんな言い伝えが新たに誕生し、儀式化されることを夢見ました。
②インスタントに「場」を開く
合わせて、2015年10月19-21日に東京(西麻布、新虎通り)にて行われた、徳島大学フューチャーセンター出前FC「アバ・カフェ」プロトタイピング(場づくり演習)での学びと成果が生かされています。
●準備会
運営のため、徳島大学大学地域創生センターの呼びかけにより、地域の有志、徳大生(サービスラーニング、キャリアプラン)、高校生(小松島西高等学校)が集まった準備会が組織され、以下のミーティングを行いました。
準備会の開催
小松島6次化ネットワーク農業WGで説明/呼びかけ:11月10日(18:00〜)
第1回準備会:11月18日(18:00〜)
第2回準備会:12月07日(18:00〜)
第3回準備会:12月09日(16:00〜)
振り返りの会:12月12日(16:00〜)
●運営の基本
以下の通りでした。
・話し合い、提案を持ち寄る
・会場設営 テント(タープ)を持ち寄る
小松島商工会議所(4張)、美馬市地域おこし協力隊(15張)を提供
・その他
-保健所問題:各出店者で対処を済ませておく
-原則:今後の出店数を増やし、継続と特色化を図るため、徳大ファーマーズマーケットの理念を共有し、それに合致する運営と出店販売の原則をつくる。
-ブランド化戦略:商品やビジネスモデルの開発に取組む。
●社会イノベーションの加速
イノベーションの観点からは以下の目標が掲げられました。
グラウンドコンセプトは「地域の未来のデザイン」です。
①大目標:地域の持続、エコ&グリーン、ローカル
②中目標:つながりをつくる場づくり
③小目標:夢の社会(理想のコミュニティ)をプロトタイプする
イノベーション戦略:
イノベーションを促進するため、通常ではありえないようなコラボや協業ににチャレンジする
例:学生×農家さんのコラボ
徳大ポットラックカフェ×阿波農産×くまごろう×美馬市地域おこし協力隊 →→→地域食文化を土台にした新スープ開発
+ニンジン(美馬市地域おこし協力隊)
+グリーンレタス、アカミズナ(阿波農産)
+クラッカー(くまごろう)
●結果:
1.学生らの手で耐火煉瓦による土窯が組み立てられた。
2.火起こしには大学生と地域住民とのコラボレーションが必要だった。
3.土窯を囲んだ場づくりはコミュニティ形成、市民参加のポイントとなった。
4.総合科学部1年生のチャレンジで美味しい竹輪パンが誕生した。
5.「陽だまり広場(Sunlight Square)」がプロトタイプされた。
6. 陽だまり広場を育てていくデザインチームが組織された。
7.座る場所づくりは共通の課題として認識された。
基礎データ
運営:運営サイド:51名
来場者:約100名
テーマ:土窯で焼くパンとスープ
出店数:15店舗(出店目標:15〜20店舗)
参加授業:
共通教育「サービスラーニング」(3名、ポートランドへ短期留学を予定)、
総合科学部「キャリアプラン」(21名)
授業担当:いずれも吉田敦也。学年は1年生。
出店者と商品:
1. 雪花菜工房(県立小松島西高等学校)*
アイス(バニラ、チョコ、抹茶)、野菜しいクッキー(かぼちゃ、ほうれん草)
2.くまごろパン
クラフトサンドイッチ(30個ほど)**
3.市岡製菓
五線譜
4. 阿波農産
かぶら、水菜
5. リーベンデール***
古代米パン
6. (有)山陽堂***
米粉カステラ、他
7. (有)樫山農園***
トマトのシロップ漬け・トマトのジャム(試食品)
8. みその農園***
クッキー、みかん
9. ベジハッピー
カレー粉、野菜
10. 小夏農園
ほうれん草、だいこん、菊菜
11. 美馬市地域おこし協力隊(美馬市の有志を募る)
ニンジン、自然農法オーガニック野菜、伝統工芸品・手芸品、はちみつ数種類
12. 徳島大学 学生運営カフェ「カフェ・ポートランド」****
スープ(Portland New Seasons Market鼻風邪ぶっ飛ばせチキンスープ風)
13. 徳島大学 学生運営ベーカリー「Atsuya’s Bakery」****
ちくわパン
14. 徳島大学 キャリアプラン授業「チームいのっち」****
ミカンツリー
15. 徳島大学 学生運営「広がれ徳島アババイマップ」****
いいものまるわかり掲示板
16. 徳島大学 学生運営バンド「ファーストインプレッション」
テーマソング探し
17. 地域創生センター
土窯を使ったパン焼きワークショップ*****
*指導の周藤教諭はポートランド視察経験あり
**アド畑とコラボ
***小松島商工会議所グループ
****徳島大学総合科学部科目「キャリアプラン」
コア・メンバー等
田中隆史(小松島商工会議所)
周藤隆明(県立小松島西高等学校)
松浦 徹、三村剛史(くまごろう)
倉科トモ(美馬市地域おこし協力隊)
小川貴士(あど畑)
浜田浩明(阿波農産)
佐々木利幸・奈三江(石井町小夏農園)
大野美奈(徳島大学総合科学部)
金地 輝(徳島大学総合科学部)
由良友明(徳島大学総合科学部)
上岡泰河(徳島大学総合科学部)
吉田敦也(徳島大学地域創生センター)
■付記
徳島大学全学共通教育「サービスラーニング」特別公開授業
ファーマーズマーケットの翌日(2015年12月13日)、ポートランド州立大学のスティーブジョンソン博士による「ポートランドから学ぶ市民参加の技と力」が開催され、参加の35名が5つのグループに分かれて、「助任の丘 陽だまり広場(Sunlight Square)のデザイン」をテーマにデザイン思考セッションを体験しました。 ポイントは、グループのなかでの役割の付与 、グループによるグループのためのルールづくりでした 。
コミュニティを育てる基本
成果 1. ひとりひとりが役割を持つこと。
成果 2. 独自のルールをつくること。
報道等
http://www.tokushima-u.ac.jp/cr/docs/2015120700059/
http://www.tokushima-u.ac.jp/cr/docs/2015120700059/files/TokudaiFC-FM20151212.pdf
徳島新聞(2015/12/13 13:38)http://www.topics.or.jp/localNews/news/2015/12/2015_14499815880208.html