★徳島物語(序章)
■今なぜファーマーズマーケットなのか?
■徳島物語のはじまり
徳大ファーマーズマーケット
発案に至る3つの動機
大学が、地域の中核となり、高い創造力と独自性を持って、世界モデルとなる「持続する地域」をデザインできるかどうか!? それは学生、地域人材、新しい研究を育てていくことにかかっている。そして、そのための今日的キーワードは「キャンパスイノベーション」ではないだろうか。
そうした問題意識から、地域創生センター3.0づくりを始めたのが2013年の初頭のことです。以来、3年間にわたって行った2つの研究、①米国オレゴン州ポートトランドのまちづくりに関する研究、②北欧を中心にしたフューチャーセンターに関する研究を行いました。その結果、徳島大学に、未来を創る装置「徳島大学フューチャーセンターA.BA」が誕生しました。
そこでの大きなテーマは「地域の持続と成長」。そのための問題発見とそれを解決していく社会イノベーションの加速。
掲げた”問いかけ”は「地域創生センターが、フューチャーセンターA.BAを活用して、自分たちの範囲ですぐさまできることは何か?」でした。
より具体的には、
「地域の変化を起こす」
「それを目に見える形にする」
「そのことが次を手繰り寄せるステップになる」
こうしたことを短期的に実現するアクションとは何か?
徳大生、地域の人たちを巻き込みつつ、ポートランドの仲間たちと、ポートランドの現地、並びに、常三島キャンパス、神山学舎、上勝学舎で、デザイン思考ワークショップを多様に開催し、インプット、ディスカッション、プロトタイピング(アウトプット)を繰り返してきました。
そのプロセスを経て、見出されたことは、以下の3つがキャンパスのなかに必要ではないか、そんな結論でした。
■地域と地域、地域と大学がゆるやかにつながる「場」
■地域と地域、地域と大学が地域を共創する「場」
■ローカルを共有し、のどかに楽しむ「場」
次は、この3つの「場」をキャンパスに作るためのアクションとは何か?
ひとつの答えがキャンパスファーマーズマーケットづくりでした。
「ローカル」
「幸せの共感」
「健康コミュニティ」
「インスタントに(大きなお金をかけずに)設置/撤去できる」
「地域に真に必要な「場」が個々人の参加と工夫で作られていく」
「継続すると、新しいコミュニティができ、地域の変化として、目に見える」
そこで、2015年9月24日、徳島大学フューチャーセンターA.BAの開設を記念した基調講演のスピーカーとして米国オレゴン州ポートランドのマーク・レイクマン氏を招聘することなり、地域創生センター、フューチャーセンター発の「場」づくりが始まりました。
マーク・レイクマン氏はポートランドの市民運動「シティ・リペア(街の修繕)」の創始者です。地域住民が中心となった共創で、空間を「場」にしていく。そのことを基本理念に、交差点ペインティングなどを展開。「できないことを成し遂げていく」スタイルで「道路とは何か?」など公共のあり方を問いかけていくコミュにテクチャー(コミュニティ建築家)として世界的に著名です。
同行したのは、同じシティ・リペア運動に参加し、パーマカルチャー子ども教育に取り組むマット・ビボー氏でした。
また、そもそも、基調講演者としてマーク・レイクマン氏を推薦したのは、2006年、2013年、2014年と3度にわたり徳島大学を訪問した経験があるポートランド州立大学のスティーブ・ジョンソン博士です。彼は、ポートランドの40年にわたるまちづくりを長きにわたって先導してきたアクティビストのひとり。全米1と言われるポートランドのまちづくりの成功の秘密をテーマに博士号を取得し、社会学者ロバート・パットナムに影響を与えたことで知られているキーパーソンです。徳大ファーマーズマーケットはこの3人のポートランダーを巻んでスタートしました。
徳大ファーマーズマーケット
3つの原点
胸の高鳴る2015年9月24日がいよいよやってきました。
徳島大学フューチャーセンターA.BAがオープンする日です。
マーク・レイクマン氏は、そのオープニングセレモニーで「不可能を越えてー地域を持続させる場づくりー」と題した基調講演を行い、以下の2つのことを私たちに教えました。
■場づくり(新しい公共)Place Making
■不可能を超えていく(新しい徳島物語づくり)Getting Beyond Impossible
一方、私たちは、こうしたマーク・レイクマン氏の基調講演にふさわしいお礼のアクションとは何か? 考えた末、基調講演終了後に、ファーマーズマーケット風の「場」を作って、そこでランチすることにしました。
その際、徳島大学ボルダリング倶楽部の協力を得て、カナダの公園をモデルにした即席ボルダリングウオールを特設し、学生や地域の子供達の参加を促す工夫を施しました。
しかし、不運にも、当日は雨となりました。ランチは、フューチャーセンターA.BAが入居する地域創生国際交流会館1階のホールで行うことになりました。地域の人たちと一緒にランチし、交流できましたが、ファーマーズマーケット風とは言い難い? そんな風に感じて、とても残念でした。
翌日、2015年9月25日、マット・ビボー氏は「持続する文化としての徳島ストーリー、どう作るか?」と題したワークショップを開催しました。
ワークショップでは、インプットとして、パーマカルチャー(永続する文化づくり)の基本と技法について学びました。その後、マーク・レイクマンさん、マット・ビボーさんらによる「村づくり演習」が予定されていましたが、雨は降り続き、止みません。これも屋内で行うことになりました。
こうした経緯から、徳大ファーマーズマーケットの初回は第0回という位置づけとなりました。しかし、後から考えると、これはこれで十分よかった、そんな風に考え始めています。
それはなぜか?
ひとつは、村づくりへの気づきでした。
振り返って見ると、マーク・レイクマンさんとマット・ビボーさんの2人も困っていました。雨で屋外で実施できない。どう修正しようか。フューチャーセンターのフォーカスブースでディスカッションを繰り返していました。
その結果、「長い竹を30本用意できますか?」「屋外で使うはずだったパラソルを貸してください」「紐、段ボール、色紙、ペン、ハサミ、糊、テープも用意してください」。こんなというリクエストがきました。これらを使って「村づくりワークショップ」が行われたのですが、これが徳大ファーマーズマーケットの原型を作ることになるとは、予想しませんでした。
徳大ファーマーズマーケットは村づくり。
2人はワークショップを通じてそのことを私たちに伝えようとしていたのです。それが、屋内開催となったことによって、非常にわかりやすい、インパクトあるものとなって体感できたのです。まさにオープン・アイズ・エクスペリエンス。大きな気づきがもたらされました。
もう一つは、物語づくりへの気づきでした。
「社会変革は過程(プロセス)に始まる」と言われ「物語を作る」ことが大切とされます。そのため、マット・ビボーさんに「持続する文化としての徳島ストーリー、どう作るか?」と題したワークショップをお願いしました。
一方で、物語とは何か? どのようにして作れば良いのか? マット・ビボーさんのレクチャーを聞いた後も、悩ましいことでした。人々が集まり、自然のあり様を理解して、地域の野菜や産品を生産/販売、つながり/対話からコミュニティを形成する。頭でわかっても、地域課題は山積み、とてもできそうになく、目が眩みます。実のところ、この第0回の記念写真を見直して見ると、現在のメンバーはほとんどいません。それが物語なのか?
しかし、これもまた、びっくり。マーク・レイクマンさんの村づくりワークショップでは、大真面目に村の形を作り、対話の場となる広場を設置して、夢の村のデザインを楽しく語り合う。それを全体的に共有して、最後は「満面の笑みごっこ」。「村の精(魂)」を呼び起こすのだそうです。
これは後になって気づいたことですが。この時、マーク・レイクマンさんが私たちに暗に教えたことは、徳島物語は「目標に向かう人達による笑顔の場づくり」の歴史。
それを徳大ファーマーズマーケットに置き換えるなら、固定的なメンバーが組織体制を整えることではなく、笑顔の場、幸せのファーマーズマーケットが続いていくことが重要であり、そこにできていく「場」、仕組み、コミュニティがやがて新しい公共となり、地域を変えていく力を持つ。そのプロセスこそが徳島物語だというわけです。
報道等:
http://www.tokushima-u.ac.jp/cr/docs/2015091400095/
徳島新聞(2015/9/24 14:16)
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2015/09/2015_14430718374165.html?fb_action_ids=10206671337755202&fb_action_types=og.likes